2011年06月07日

鮫を撃つ・中世ヨーロッパ編

★実作に使用する場合は連絡★

「鮫を撃つ・中世ヨーロッパ編」100ページ

異世界の日常を描くというコンセプトなので、
劇中人にとって意外なことはあまり起こらず淡々と進む。
読者にはむしろそれが面白いというタイプの見本である。
★小さなタイトルはシーン冒頭に入れる。
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ページ1
扉である。ラストシーンの、春まっさかりの市場の、広い光景。
奥行きのある絵で、手前にいくぶん大きく人々や産物を描く。

2・3
タイトル[ナルザとギア]
見開きを上下に分割し、上段は横長の広い絵で春浅い荒涼とした風景。
空には奇怪な雲があり、雁のような鳥の隊列がひとつ。
大地にはナルザの存在が認められ、やや離れて卵樹園。
卵樹は鳥のような形である。
下段を分割して、以下を表現する。
ナルザは180センチで磨きぬかれた彫刻のような筋肉、
オレンジ色の肌(通常描写は普通に白)、燃えるような赤毛、
青い目と細い鉤鼻と大きく弓のような口、さながら[人間の鷹]である。
26才。空を睨んで標的を待ち続けている。そばに相棒のユニック。
馬に似た生き物でたてならびに二本のツノがある。眼は鋭くやはり鷹のようだ。
ちいさな荷車とつながれ、荷車の後半には生活道具が小さくまとめられ、
前半には弓幅1メートルを越える巨大なボウガンが置かれ空を向いており
戦車の趣。ナルザが低い口笛のように呟いた。「お出ましだ」
すばやく荷車に乗るとボウガンの短い横木に両足を踏ん張り、
両脚と両腕と胴と胸と肩と、「ウオッ!」という短い掛け声を使って
弓を引き絞ってガキンとロックした。
矢・・・鮫を墜とす以外には使い道がない、禍々しい先端の・・・を装填し、
大地に踏ん張って構えた。
★小さな絵を活用する。ナルザ・ユニック・荷車は個々をいきなりコマ分割しない。

4-6
奇怪な雲には水面を傾けた池がありそこから鮫が現れる。
大きめのコマに鮫の小さな絵、シルエットでも良い。
次に、ボウガンと一体のナルザを斜め上アングルから。
以下、ダイナミックなアングルを駆使して舞踏劇のように描く。
物理法則もファンタジーなのでボウガンの射程はすばらしく長い。
鮫のサイズは2メートルほど。鳥(対比物)とのツーショットを描く。
卵樹園に向かい(園側から見た絵を入れる。
「来るぞ!煉瓦小屋か大瓶に入れ!」)10メートルまで下がると
体をゆらめかせて平行移動に移りつつ加速するするため尾びれを振る。
ナルザがひきがねを引くと矢は的に吸い込まれ鮫は横腹を射抜かれて
浮き袋の気体を噴き出しキリモミ状態となって落下する。

次の、最後の横長コマとの空白を大きめにとる。
場面変わりいくぶん整った道を少年が、荷車をひくユニックと歩いている。
大理石色の肌に深い緑の眼と髪。14才で、猫の子供のような印象の顔だが
無口で頑固そうな顔つきは職人の血を思わせる。荷車には1メートルほどの
束ねた金属棒。その両端は接合のため複雑な切れ込みがある。他にも
黒っぽい道具箱、巻いた毛布など生活道具。ただしこれらこまごました描写は
次ページに譲る。このコマはアップではないからだ。
ここからはしばらく静かなアングルが続く。
ユニックは馬に似た顔だが眼だけは猫に似ている。ツノは1本。
「あとすこしでミラウ村だ」「ファオー」

7・8
村が小さく見えてきた。風車が何基か建っている。風車のややアップあり。
「ファオーオオ」ユニックがたちどまり後ろを見た。別の荷車が
近づいてくる音に気づいたのだ。男が少年に呼びかけた。「おおい!」
(オレンジの肌に赤毛・・・イルギス人だな)
男のユニックはずいぶん大きい。ならんで進み始める。
「あれがミラウだな」
「村に用なら僕についてくるといい。まず役場へ行くんだろう。」
少年が少しも子供らしくないことに男はちょっと驚いたが、微笑んで応えた。
「そいつは頼もしいな。俺は鮫撃ちのナルザって者だ。昨日も隣村で一匹しとめた。
 ミラウにはでかい奴がいると前々から噂で聞いててな。」
「僕は風車屋のギア。僕がいなければこの州の風車は回らない。」
★次に最後の横長コマ、輪架を手前に大きく示した村の絵。
ここにタイトル[輪架の村]が入る。静かなアングルに限定されるのはここまで。


二人は、煉瓦作りの村を進む。建築の基本は円柱と六角柱である。
拝輪教が三を神聖視するからだ。村人の多くはギアと同じ緑の髪と眼。
辻には輪架(支柱の先端に輪)が立ち、標識を兼ねたものもある。
役場へ導く標識をギアが翻訳する。

10
役場では太った村長が長い干し草で敷物を編んでいた。ギアは懐から、
てのひらサイズの陶板(大小の輪をくっつけた形)を差し出した。村長は
裏返して輪に沿って刻まれた文字を読み、ギアの顔と見比べた。
「風車屋のギア・・・マハルグの息子だな」「今期から僕がやります」
村長は理由を聞こうとしたが

11
ギアの目を見て口をつぐんだ。そして別の陶板を引き出しから取り出した。
テロップ[公の仕事をするため教会に泊まるための権利証]ギアのとあわせて
二つを渡す。次にナルザが、くびかざりのように紐を通したいくつもの陶板を
ジャラジャラとはずして、出した。鮫を退治したことを各地の教会が証したものだ。
村長はハッと気づくと立ち上がった。
「おお!あんたがナルザか!

12
我々を救ってくれ。鮫の説明をしよう。ちょっと待っててくれ今地図を・・・」
ギアはその声を背中で聞きながら役場を出た。水を飲み終えた二頭の
ユニックが顔を向ける。
場面変わり教会。
俯瞰に近いアングルのコマ・広い光景。緻密な絵を描く。

13
教会。ナレーション「教会は病院・孤児院・宿泊施設・物々交換場などを
兼ねている。壁には拝輪歌の詞を10番まで刻んだ石版があり、
子供たちはこれで文字を覚える。」教会はドーム型の本堂と円柱の別棟
いくつかで構成されている。外壁は煉瓦で、内部の仕切り壁は保温性の
高い発泡煉瓦、床や梁は木材である。かなりの青少年が住んでおり、
金髪の人形のような美しい娘もいる。★教会の間取り図に限らず建物と
村全体の地図を厳格に決めておく。場所の違いが一目でわかるよう
デザインを工夫する。
カノンは客室の掃除を終えて(道具で示す)干し栗を食べながら
ひとやすみしていた。長い黒髪は後ろにまとめて無地の細い布で結んである。
クリーム色の肌に切れ長の大きな黒い目。見た目日本人でありナルザは
イギリス、ギアはドイツ人。村長はフランス人。カノンは15才165センチで
ギアはわずかに低い。

14・15
タイトル[カノン]
カノンはその日客当番だった。「風車屋さんの到着よ」窓の外から
呼びかけるシース(教会主)は水色の肌に紺色の眼と髪の女性だ。
ただし普段は仮面(顔の上半分を隠す)をつけている。40才ぐらいで、
黒い長いドレスに身を包んでいる。カノンは干し栗の袋をスカートのポケットに
仕舞って立ち上がった。「どこ?お客様は」カノンは自分より背が低い少年が
風車職人とは思えなかったのでギアに尋ねた。ギアは何も言わずに、
鞄から金属板をとり出して見せた。金属板のアップ。ネジ留め可動部を含む、
いくつかの幾何学的な穴と目盛りがある。(歯車の設計具!)カノンは驚き、
なんと言おうか迷っているうちにギアは金属板をしまい、
教会の作りを知っているかのように迷わず部屋に向かった。

16
カノンは水差しや花瓶を置くなどする。ギアは「地図を持ってきてください」と
言ってベッドに腰をおろし、「今日中に順路を決めて明日の朝から村をまわります」
と相手を見ずに喋りながら鞄から筆記具を取り出す。
カノンは(なんて奇妙な少年なのだろう)と心の中で呟きながら
シースのいる本堂へ向かった。

17
「シース!地図を、ええと風車屋さんが・・・」
「地図なら村長から貰ってきたぜ」意外な方向からの知らない声に
カノンが振り向くと、ナルザと荷車が近づいてきた。(裏設定・彼がしばしば遠くから
大声で喋るのは、聴力が優れているため。相手は大声を出さなくても良いのだ。)
「あなたは誰?」

18・19
「鮫撃ちだ。荷物を見りゃわかるだろう」
「それじゃ、あの銀色の奴を退治してくれるのね?ようこそミラウへ!」
カノンは深くお辞儀し、ハッと何かに気づいて本堂へ走ってゆく。
ナルザは「おーい、地図はギアの分も貰ってきたんだぞ」と言ったが無駄だった。
大きな布の地図を握って廊下を急ぐカノンを仲間たちが不思議そうに見る。
部屋に入るとギアは紙に数字をたくさん書いていた。

20
お辞儀をしながら「ようこそミラウへ!地図です」
「ああ・・・お辞儀のしきたりを忘れていたんだね」カノンは相手の言葉を待たずに
足早に立ち去った。「変な娘だなあ」そこへ見知らぬドーウ人の中年男が
やってきた。

21
服の腹に大きく立方体が刺繍してある。(塩屋か)
「わしはテイスだ。一晩ここに世話になる」ギア「僕は風車屋のギア」
テイス「商人であっても村に招かれた場合は教会に泊まれる。わしは常連じゃ」
「そして俺が鮫撃ちのナルザだ」いつのまにかナルザが来ていた。

22
「おお!あんたが噂の名人か。銀色の奴はずいぶんでかいそうですな。
 墜としてくださいよ塩がたくさん売れる」とテイスが笑った。
「みなさん、私はカノンです」カノン(ナルザを案内してきた)が
唐突に言ったので男たちはちょっと驚いて顔を見合わせた。
ギア「そう、名乗ることも忘れていたね」カノンの反応は不機嫌。
最後に小さめの横長コマで、教会のシルエットと日が暮れる空。

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★★★このあと静かなシーンが長く続くのだが、ここに絵柄と脚本の
組み方の法則がある。この「鮫を撃つ」を手塚や鳥山のように[散文的説明に
特化した絵]では作品化できない。[人間が飛んだり跳ねたり建物が崩壊したり
巨大あるいは奇抜なモンスターが現れるなど派手なシーン]が
大きな割合で存在はしないし、ドラマの大筋が目まぐるしく展開するのでも
ないからだ。絵そのもので魅せる力が大きくないと成り立たない。
といってもこれは、[脚本が劣るのを絵でカバーするという消極的な収まり方]
ではない。味わい深い静かな状況を淡々と描く[のみ]の作風でさえ
積極的にアリなのだから。わかりやすい例は水木しげるの日常的作品群だ。
大胆に簡略な人物と写真のような背景を組むことで成功している。
人物と背景を逆にする作風もあるし他に中間的な組み方もあるわけだが、
いずれにしてもこの種の脚本は西洋式画力を要する。
(水木のような変則的な絵柄を特に勧めているわけではない。中間法が順当。)

地図や挨拶で対面が重複するのは建物の構造や位置関係、
各人の性質を示すつまり劇世界の存在感臨場感を生むためで
大筋には関係ない。これは[異世界を説明してゆく]劇だから
意味の密度がちょうどよくなるのであって、普通の現代劇なら
大筋との関係(すれ違いが大きな困難を生むなど)が必要。
ただし、建築物や地理や人的組織構造が特殊で説明を要する
なら異世界と同様。
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23
タイトル[銀色の奴]
翌朝、仕事を始める農夫たちの会話。顔をトリミングした
断片的な絵の並び、農具の克明なアップ、背の高い作物など、にセリフ。
最初のコマはタイトルありセリフ無しで、前ページと雰囲気ががらりと
変わるよう、やや大きなコマに精密な一枚絵。
「昨日の日暮れの鐘はたくさん鳴ったなあ。ちゃんと聴けたかい?」
「男が三人やって来たという知らせだよ。」顔トリミング終わり。
大きなコマに広い光景小さな絵、セリフ三つ。
「一人は風車屋だな」「それからたぶん塩屋だろう」「あと一人は?」
10才ぐらいの目ざとい子供(これも働く)小さめの全身像が
遠くを指して、「あいつだよ」大人たちもそっちを見る。
遠くにそいつの、小さな全身像シルエット。
次のコマは子供のバストアップ。興奮して「きっと鮫撃ちだ!」

23の最下段は24にくいこませてもよい。

24
このページは正方形に近いコマと残りの横長の二コマ。

ユニックに乗ったナルザ、薄いリュックを背負っているだけで
ボウガンも荷車も無し。カメラはその斜め後ろやや上。
丘(1メートルほどの段差でもよい)からやや遠くの農夫たちを見下ろし、
画面右上を指して「黒い鏡はあっちだな?」「そうだよ!」

駈けるユニックの横姿。自然な左向き。
浅い角度の日光で朝を表現する。

25
このページは一コマで、広い光景。前コマと同じ横姿が
画面下方にあり、空にナレーション。
「鮫は真空より軽い気体を体内の浮き袋に生成する。
彼らの住処「湖」は雲に包まれて移動するものもあれば、
岸壁に垂直の湖面を見せているものもある。
崖の湖はどのような作用で安定しているのかはわからない。

現れるのは週に一度であり鮫ごとに曜日が決まっていた。
一週間は石・銅・砂・鉄・鉛・星の六日であり
銀色の奴は鉄曜日に現れる。
今日は砂曜日で明日が勝負だ。」
★ミラウは10キロ四方ぐらいで人口は3000人ぐらい。
農地と教会の他、鍛冶屋・煉瓦や陶器の工房、炭焼き小屋
などなどがある。風車の位置を含む完全な地図を作成し、
背景は常にそれに照合して一貫性のある世界を描く。

26〜29
[黒い鏡]は垂直の湖面を光らせる断崖で、村を見下ろすかの
ように聳えている。明るいが冷たい空の下、たくましいユニックは軽快に進む。
地図をにらみつつ村を縦横にめぐり地の利を悟った。・・・を描く。
村をひととおり巡回し、読者に対しても地理を示す。
以下の事情を、ナルザと村人との会話あるいは村人どうしの問答で示す。
樹卵は果実だが人間が食べなければ離樹後20日で雛鳥が生まれる。
鮫は地表近くでは用心深くまた敏捷で、待ち伏せしてもあまり成功しない。
下降する前に撃つのが得策であった。また、矢の軌道が低い角度だと、
外れた場合無人地帯を越えてしまう恐れがあるので、低く撃つ場合には鮫を
どの方向から撃つか選ばねばならない。このため地理条件の下見が必要なのだ。
矢は風に流されるので風が強い日には風上からしか撃てない。もっとも、
鮫自身も風に流されるため強風日には水中から離れない。鳥のように自在には
飛べないからだ。また、空気中では[息が長く続かない]らしく、距離2キロほどを
往復するのが限界であった。ところが銀色の奴は5メートルもあり普通の鮫の
16倍ほどの体積があるため息が長く、村を徘徊し卵樹を食うだけではなく
大きな口でユニックを食うことがあり被害は深刻なものとなっていた。
体色は普通の灰色ではなく銀だという。これはナルザも見たことがなかった。

30-31
タイトル[風車と櫓]
一方、ギア。村に20基の風車と31基の水車がある。これを点検し老朽部品を
差し替える。14ヶ月に一度行なう。1ヶ月は4週間つまり24日である。
一年は16ヶ月で、この州には同規模の村が27ある。
ギアは金属棒を接合しギアユニットに差し込んでネジで締めた。1メートルほどの
支柱に3メートルほどの水平棒、その先端をユニックに繋いで合図で円軌道を
走らせると、丸いのこぎりが素晴らしい速さで回転するのだった。部品は現物を
見ないとわからないことと移動の重さを考えると現地製作中心。
材木も現地調達(切り株で示す)。

32
水車を点検し老朽部品を差し替えてゆく。ユニックは木屑を次々に食べてゆく。
そのうえ雑草も食べ続ける。
「最近よく食べるな?まだ大きくなるのかな」

33-34
ギア休憩。遠くに崖が、[黒い鏡]が見える。そのかなり手前に非常に細長い建築、
櫓(やぐら)がある。そのてっぺんには警鐘が吊ってある。鮫の出現を
知らせるのだろう。しかしそこに上った者は鮫に襲われないか?・・・ああそうか、
だから崖から遠いんだな。見つけたら急いで降りて、鐘はたぶん下からロープを
引いて鳴らす。すぐ鳴らせるよう上下に一人ずついて、上から合図するんだな。
合図はやはりロープだろう。たぶん櫓の根元には身を隠す大きな壷がある。
ギアの表情は労働者からプロデューサーに変わっている。
★数値のくだりはすべてナレーションだが、作業の黙劇と並行し、適度に分割する。
櫓については内心セリフ内心セリフと並行して構造図を示す。

35
タイトル[明日は鉄曜日]
教会に戻ったナルザは筋力運動を行い水浴し体を拭い部屋着に着替える。
カノンがやってきた。「用はありませんか」

36-37
「ああ・・・カードで遊ばないか。君が勝ったら肩車して客舎をひとまわりしてやるよ」
「暗くなっちゃうわよ」「明日さ」ゲームを始めた。
「塩屋さんは?」「仕事が終わったからここには泊まれない。
お得意さんのところに厄介になるそうだ。鮫退治を見物するためにね」
「ギアはいつまでいるのかしら」「3日か4日と言ってたな」
カードの会話は、[後に重要な意味を持つ]という印象約束を示すよう
描法を工夫する。単に読者向けの表現ではなく、[カノンは潜在的にギアを
気にかけており、ナルザが先に察している]というシーン。
ゲームは、陽が落ちるころカノンが勝った。そしてギアが帰ってきた。

38
ギ「夕食はまだ?」カ「もうすぐよ。私は当番じゃないから暇なの」
ナ「あー俺もはらぺこだ。食堂へ行こうぜ」その時ユニックは干し草を
もくもくと食べていた。
先に食べ終わったナルザのユニックは隣を不思議そうに見ている。

39-41
食堂に全員が集まり食前の短い祈りが終わるところ。
ほし魚とバターを使ったシチューと胡桃を混ぜて焼いたパン、
瓜のような果物を糖根と煮て冷ましたジャムのようなもの。
おわりに木の実を煎じた茶が出る。会話とナレーションで、
[平日の食事はこういう具合。年中行事や結婚式や誕生日や
金婚式などは贅沢ができる。結婚式は村行事であり
個人パーティは隣家も招かれる。六人家族なら年18回誕生日があるので、
十日に一回ぐらい贅沢な食事にありつける。教会住人の誕生パーティは
月ごとにまとめられる。]を示す。誕生日の話題は後に、カノンの年齢すなわち
に結婚につながるものであり、脇役の同席者が意図無しで発言するが、
カノンの反応は微妙。
[教会の住人は15才までの孤児50人ほどで年齢に応じて教会内の
仕事をしている]はここまでに示される。
最後の大きめの横長コマは、翌朝の空

42
三コマある。
一は横一杯で上下7センチほど。
タイトル[対決と異変]
冒頭シーンと同じ種類の鳥の群れ横からアングル。
鳥の向きは左へ。
残りを縦分割し、三は二より小さい。
二は崖全景を高いアングルから見下ろした絵で、ある程度地上を
含み、例の櫓も描き込む。
三は湖の輪郭が画面にようやく収まるぐらいにカメラが寄り、
アングルの高さは画面中央。湖は百メートル程でその中心から
鮫が現れる直前の水しぶき。鮫は前後5メートルだが
その割しぶきは非常に大きく、湖全景の中でもそれとわかる。
二・三とも鳥の群れがあり、上からしぶき付近に列を成して
向かう。

43
三段に割り、三は他より大きい。
一で鮫が現れ二で離水し三で湖を後にし降下を始める。
鳥を鮫の手前と向こうに描きスケールを示す。
水しぶきは垂直湖面に戻ってゆく。
他の鮫と違って腹部に、背びれと上下に対を成す腹びれがある。
つまり尾びれの他に水平垂直に対を成す四枚のひれがあり、
腹びれの先端には硬質の鉤が前向きに尖り、黒っぽく光っていた。
背びれの根元には鎧のような分割覆いがある。
そして胸びれの後ろにエラと同じ切れ込みがあり、
そこから青い炎を吹き出した。

44
二段あり二は一より小さい。
一は矢をセットしたボウガンを低い体勢で構えて空をにらむ
ナルザの全身像。悪鬼のような表情。
二はバストアップ的にカメラが寄る。ナレーション。
「銀色の奴は5メートルもあるという。これは的として大きいという
意味でもある。村を徘徊すると言ってもまず卵樹園に向かうので、
そこまでのコースは決まっている。狙いどころはやはり
10メートルに下降したときであり、人家のない方角、
崖方面に向かって撃てばよい。

45・46
森の中。大きなコマに小さな絵の広い光景、にセリフ
「朝でかけるときはこうじゃなかった」から始まり、
断片コマが続き、二者の全身像のツーショットに至る。
ギアは困惑していた。「歩いているうちに変化したのか・・・?」
彼のユニックは丸ノコ機械の水平棒とつなぐベルトに沿わない姿に
なっていた。胴全体、特に背中が丸く大きく盛り上がっていたのだ。
体毛は羽毛みたいに。緑色だった眼は金色に輝いている。
「ユニックじゃなかったのか?何になろうとしているんだ」
その時、遠く鐘の音が聞こえた。
クアーン!クアーン!クアーンアンン・・・!
ここまでに、ギアを見上げる低いアングルをひとつまぜる。
このあと小さめのコマに、櫓で鐘を乱打する男の全身像、小さな絵。

47
このページ半分ほどを使って、大慌ての降下(腹に結んである
ロープは滑車を通り他端は地上に垂れて編み袋が結ばれ、
男の体重分の石が詰まっている。彼は梯子を上向きに蹴りながら
落ちて行く)を描く。すべて小さな絵。
残りの面積ひとコマに広い光景、崖・鮫・地上に小さくナルザとユニック。

48〜53
彼は背中に四本の矢を備えている。大きな的が10メートルまで下降し
横腹を見せると、撃った。矢を受けた鮫はやや回転した。明るい空を背景に
暗い銀が光る。ダメージの様子は無い。腹に矢は刺さっているが、
通らなかったのだ。そいつは真っ直ぐにナルザに向かってきた。
ナルザはすばやく全身でふたたび弓を引いた。「うお!」という声とともに。
ユニックにまたがり100メートルほど離れた林に向かって走らせる。
鮫が追ってくる。空中での方向転換に手間取ったのでかなり距離がある。
ナルザはユニックの肩に両足を載せて蹴り、少し浮いてから落下し着地した。
そして90度左を向いて矢を構えた。ユニックは左折して走ってゆく。
これで鮫の横腹を撃てるはずだったが鮫はユニックを追わず、
惰性に流されながら縦に回転した。幅1メートルはあろう尾びれが
すくいあげるようにナルザの左半身を打った。
「うおー!」
彼は右手に握った弓幹だけでボウガンをひきとめながら激しく
地面にたたきつけられ、転がった。鮫の腹から抜けた矢が落下して、
少し離れた地面に刺さった。ナルザは頭と目をめぐらせて敵の位置を求める。
奴は低空で向かってくる。腹びれを横にたたんでいるから、目的は地表にある。
俺を食う気だな!
矢を放って当てても食われてしまうだろうが、
弓を垂直に立てて構えればいかに大きな口でも食えない。
しかしナルザは体をうまく動かせなかった。銀色の悪魔は口を最大に開いて
動けない獲物にゆっくり迫る。剣を並べたような二重の歯列。
しかしそれは
ドズム!
という鈍い音とともに軌道を変えナルザをそれた。
彼の頼もしい相棒が突撃して鮫の側面を突いたのだ。
銀色の飛行船は突風に遭って離れてゆく。

54
その頃ギアのユニックは、背中の翼を広げた。
どのようにたたんでいたものか、翼幅は体長の倍近くある。
大きく羽ばたき舞い上がった天馬は、いずこかへ飛び去る。
ギアは呆然と見送った。
★既存のペガサスではない。
翼はトビウオ的な二枚あるいは蛾か蜂的な四枚とする。
ただし透明では調和しないので短い毛で覆われている。
尾は垂直尾翼なので魚の尾に似ている。
印象としてはトビウオあるいは翼虫に馬の頭部と四足を
備えた形状で、一体感がありかっこいい。
気持ち悪くならないよう調整する。

55
ナルザのユニックは彼の腰ベルトを咥えると持ち上げ林に向かって走り出した。
鮫はまたしても追ってくる。彼は林に投げ込まれ相棒は風のように去る。
鮫は林に突っ込んだ。

56
バキバキバキミシ!ぎぎぎぎ・・・。
立ち木に挟まって宙吊りとなった。
ナルザはそのほんの先、2メートルほどのところにうずくまっていた。
左腕は真っ赤に染まっている。右手はボウガンを握っている。
鮫は樹木から抜けようと身をくねらせる。
その瞳の奥には暗い紫の炎が渦巻いている。
独白「流線型の鮫を正面から撃っても矢は浅い角度ではじかれてしまうだろう」

57
独白「頭部が静止しなければ真正面の中心に当てることはできない。
奴が宙吊りになっているうちに、撃てる位置まで這って行ければ俺の勝ちだ。」
しかし彼が右肘で身を起こした時、鮫を支えていた枝が折れて荷物は落下した。
ベキーッ!ズザザザザッズ。
鮫は胴を大きく反らせると尾で地面を打ち、反動で跳ねて少し後退すると、

58
左右に身をよじらせてさらに後進し、林から脱出した。
そして後半身から青い炎を噴き出すと上昇し、崖の方向に泳いで行った。

59
タイトル[知恵で力の輪を回す]
「・・・面目ない」
ナルザは荷車に揺られながら嘆いた。
「なに、大したもんだよ。今週の鮫の被害は無しで済んだじゃないか。」
テイスはそばを歩きながら慰めた。他にも10人ほど既出脇役が周りを
歩いている。彼らは塹壕から見物していたのだ。背後やや遠くに塹壕。
荷車はユニックがひいている。ナルザの左腕は血が固まって
黒い棒のようだ。もっと遠くで見物していた村人たちを通りかかる。
前日の十才児は自分が敗北したかのように茫然。
教会に戻ると

60
シースが出迎えて「病人と怪我人は面倒を見ます」と言ったが
男たちはすかさず、一斉に
「鮫は来週倒す!それまで仕事で滞在するんだよ」
と合唱した。ナルザはカノンがいるのに気づいて、
「肩車はしばらくおあずけだ」と笑った。カノンも笑顔を見せた。
場面変わり村長は不機嫌な顔で、たくさんの陶板を並べて磨いていた。
「ナルザが墜とせない鮫は誰も手を出さないだろう。
 なんとか彼に仕留めてもらわないと・・・」と呟きながら。

61
そこへギアが訪れた。自分の荷車を引いて。
「おや?どうしたギア。まだ明るいぞ。それにユニックは?」
「羽ばたいて飛んで行ったよ。」「羽ばたいて?」
「別のを手に入れないと仕事ができない。この村で買うか借りるかしたいんだけど」
「ああ・・・それは紹介してあげる。しかし羽ばたいて?」
「背中がふくらんで翼がひらいて・・・」

62
村長は陶板を磨く手を止めた。
「それは・・・それはウィーニックだ。眼は金色に?」
場面変わり
青白く細長い学者が「眼は金色、ひづめは黒、選ばれたるユニック
天を駈ける・・・この図鑑は正しいな。」本を開く前に暗唱しつつ
ギアに図鑑を渡した。絵図はたしかにギアのユニックと同じだ。
ここで館内の広い光景。「2万頭に1頭ほど現れる[超ユニック]であり
飼い主の元には戻らない・・・か」
「珍しいことが隣り合わせるのは偶然とは考えにくい。」

63
「ウィーニックは銀色の鮫に呼応して現れたのかもしれん。
・・・私も見たかったなあ。話を聞かせてくれ」
「悪いけどそれはあとだよ。早く代わりのユニックを決めたい。」
図書館の外観。出てくるギア。
「あいつが戻ってこないことを確かめに来たんだ」
場面変わり教会の広い光景。ナルザは病人用の白っぽい服に着替えて、
脹れあがった左腕を湿布で巻いている。
「シース!知恵のある奴を急いで集めてくれないか。腕は裂傷と打撲で
骨は無事らしいが、俺はたぶん今夜から丸一日ぐらい熱が出て頭が
働かなくなる。それまでに作戦を決めたいんだ」

64
時間経過。鮫会議開始。100人ほど集まった。学者も呼ばれて壇上に
加わった。他にシース、村長、物知りの老人などが並んでいる。
ナルザ「俺はとうぶん弓を引くことができない。」
村人「俺たちが力をあわせて引いてやるよ」
ナ「それはありがたいが、弓は撃つ直前に引かないと折れてしまうんだ」
村人「同行するさ。弓を引いたら塹壕に隠れる」
ナ「うん・・・。だが問題が他にもある。近づいて撃たないと矢が通らないこと
と、撃ち損じた鮫は同じ軌道を通らないこと
そして奴にはおとりがきかないことだ」

65
村人「鮫が湖から離水した直後を撃ったらどうか。近いし、上へではなく
水平に撃つから矢も通る。」
別の村人「崖の上へはとても人間は上れないぞ」
さらに別の村人「下から台を建てるのさ」
ナルザが大テーブルに地図を広げて高度を読む。「20メートル必要だ」
ここから黙劇。
学者と大工と鍛冶屋がその場で相談し、学者はいくつかの数式を並べて
職人たちとやりとりし、

66
設計は決まった。
しかしナルザは難しい顔で
「この形だと頂上には一人分の広さしかない。弓を引くことができない。」
みんな黙ってしまった。夕刻となり、誰かが「ランプを灯そうか」
そのときカノンが入り口をゆびさしてその場ではじめて口を開いた。
「ギア!」
みんなそっちを見た。夕日を背に小柄な影法師がやってきたのだ。

67
まだらの、ラクダに似たユニックを連れている。
壇上の石版に白墨で描かれた図を見ている。村人が口々に、
「ナルザの弓を一人で引く仕掛けはつくれるかい?」
と尋ねると、あたりまえのように「作れるよ」と答え、
「ナルザ!失敗したら僕は報酬はいらない。
成功したら鮫代の1割をくれ。どうだ?」
あいかわらずまったく少年らしくない態度にナルザはニヤリと笑い、
「お前も立派な鮫撃ちだぜ」
と応じた。
★石板の図は[土砂と石垣で高さ3メートルの
台座を作る。煉瓦を積み上げて固定し4メートル増し、その上に金属の
台座を固定する。これが3メートル。あと10メートルだ。その上に櫓を
立てる。下方は太い木材で、上にゆくにしたがって細くし、
最上部3メートルは竹。]を示す。これは66に
全部あるいは一部を描く。

68・69
見開きを上下に分割する。いずれも広い光景に小さな絵。
大きく見せたい物は手前に配置する。
上段は翌日[黒い鏡]のほぼ真下で土木工事、
200人ほどの男たちと20頭ほどのユニックが土や石や木材を運び
組み上げてゆく。金属台座の部品は5台の大荷車が分載して運んできた。
両端に突起や切れ込みや穴のある長大で無骨な金属棒である。
以上を上段全部の大きなコマで表現。
フキダシを四つほど入れ、[土砂と石垣の台座と煉瓦の構築は二日で
できるだろう。明日は安息の星曜日であり、櫓を組み上げるのは
一日で足りる。そうだ、明日は炭焼きの息子(既出)と〇〇(カノンの
同僚・既出)の結婚式だったな]という会話。
下段は結婚式。村人全部が集まって巨大な宴、歌、踊り、豪華な料理、
幸せいっぱい。この二つの大コマには主役級を描かない。
ナレーション[教会には15才までの孤児50人ほどが住み年齢に
応じて働いている。成人すなわち16才になると外部の仕事を
周旋される。女は16才で結婚するならわしであった。]

70
教会の或る部屋。結婚式の歓声が聞こえている。←この小さめのコマは
前ページにくいこませてもよい。ナルザは熱を出して寝ているが、
眠っているわけではなく地図を見ている。村の地図ではなく州全体図。
図のアップあり。塩屋のテイスが別れの挨拶に来た。
「残念だが次の鉄曜日まで滞在する余裕は無いんだ。」

71
「あー・・・頼みがある」「ん?何だい」
場面変わり、大工と鍛冶屋はそれぞれの仕事場で、ギアが描いた
設計図を睨んで工作を続けている。

72
タイトル[再び鉄曜日へ]
教会内。カノンが掃除をしている。登場時からポニーテールで細い布を
結んでいる。古いカーテンを雑巾にする前に裂いたものだ。だんだん
ほつれて来てここでは分解しかかっている。手を止めてカレンダーを見る。
予定の書き込みがたくさんあり、文字はドーウ語なのでテロップ
[誰々金婚式][何々種蒔き]など示す。過去の領域は大きな交斜線で
消されている。

73
半年後に[カノン成人式]。
外の会話が聞こえてくる。工事長がシースに「櫓が完成しましたよ」
場面変わりその場、「それじゃ村長にはここから使いを出すわ。
〇〇(孤児のひとりの名・既出。8才ぐらい)!」「はーい」
次に、彼が村の道を走る姿。

74
役場に駆け込む。
場面変わり崖の下、人々に見守られてナルザが包帯が巻かれた左腕を
ぐるぐる回してから低い位置で止め、指を開いたり閉じたりした。
それから梯子(はしご)の横棒を握って、

75
上るかと見えたが顔をしかめて戻ってしまった。
場面変わりギアの仕事。木屑だらけになって歯車部品を作っていた。
ラクダユニックがまだあまりいうことをきかないらしい。
彼の猫のような顔は細く痩せて、二年も成長したかのようだ。
髪もかなり伸びている。その日が暮れる。

76・77・78
場面変わり別の日の昼。ギアが旅支度を終えるところ。カノンは
そこを空き部屋に戻すため花瓶などを運び出す。髪はつる草で
くくってある。ギアの身長はカノンとちょうど同じになっており、
折っていた裾を伸ばすなどの変化がある。廊下を移動。
「明日の鮫退治を見物しないの?」
「風車修理の旅は長い。」外へ。彼の靴は新しい。
「一つ一つの村で少しずつ遅れたら終りのほうで大きな遅れになってしまう。」
教会の敷地を離れるところでギアは、急ぐことを示すかのようにユニックに
またがった。カノンが遅れて歩きながら「次は14ヶ月後ね」と言うとギアは
横顔を見せて「いや、成功したら僕の取り分を受け取りに来るよ
経路を変えてね。テイスが商人の連絡網を使って旅先に知らせてくれることに
なっている。さようなら。」と答えて背を向け遠ざかる。
カノンは立ち止まり、再会がいつになるか考えようとして、
とにかくむやみに長くはないと気づいたのはややあとだったので、
その笑顔をギアが見ることはできなかった。

79・80・81
タイトル[旋廻装置]
夜が明けるとナルザはユニックにまたがり出発した。荷物は何も無い。
炎のような長髪をなびかせて鷹のような男が「黒い鏡」を目指す。
櫓の姿が低い朝日を受けて長い影を地面に投げている。近くに小さな土の
山がある。見物用の塹壕が掘られているのだ。しかしまだ誰も来ていない。
ナルザはユニックを降り階段を上る。次に梯子を上る。
左腕の握力は回復したので横木をつかめさえすれば右腕の力で上ってゆける。
櫓を上りつめると1メートル50センチ四方ほどの頂台
(高い柵に囲まれている)で、そこに厚い布の低くいびつなテントの
ようなものがある。布を除くとあのボウガンが、切り株のような
旋廻装置の上で彼を待っていた。

82・83
ナルザは切り株に繋がれたロープを腰のベルトに結び、命綱とした。
次にボウガンをまわしてみた。次に上下角の動きを試す。適度に締めた
ネジにより、右腕だけで角度を変え、また固定することができるのだ。
・・・を動きで示す。この変角器ごと台の上で旋回する。ボウガンは
変角器の、鷲の足に似た部分につかまれ固定され、着脱用のL字棒が
突き出している。
それを受ける金属の切り株は太い木材を組み込んで床に固定してある。
床の鉄の大枠に十文字の木材を突っ張った形だ。切り株の小さな突起が
数本の矢を立てている。その傍には短いレバーがにょきりと生えている。
また、床の一端には滑車が外に向かって突き出している。
ロープが滑車を一回巻いており、その端は一個の大きな石に
結ばれている。30キロぐらいありそうだ。真ん中当たりがへこんで
縛るのに良い形だ。滑車を巻いて床に戻ったロープのもう一つの端は
ボウガンの横木に結ばれていて、結び目にはナイフほどの金属棒が
閂のように差し込まれている。(これを抜くとほどける)。
滑車・横木間のロープはかなり長く、ぐにゃぐにゃと旋廻機の根元に
集められている。他に上着ほどの薄い砂袋が二つと、毛布と、
あの薄いリュックもある。
旋廻台は崖の湖方向に寄った位置にあり、
ナルザが落ち着くのにちょうどよい広さが後ろ半分にある。
★文章で示すと長いが、2ページに収まる。

84
毛布にくるまり砂袋を敷いて腰を下ろしたほんの目と鼻の先に
垂直の湖面が在る。弱いが冷たい風が流れている。
教会の鐘の音が聴こえてくる。
グリリーーンン・・・ゴウウーーン・・・・
朝の7時を告げているのだ。一日は24時間である。
陽はしだいに高くへ移動する。見物の村人が集まってきた。
時間はすぎてゆく。
鐘の音が10時を告げる。ナルザは片目で湖面を見据えている。
何を考えているのかその姿からはわからない。

85
湖の内側。藍色の光が揺らめく中で、銀色の巨体が鏡を破ろうと進んでいた。
その瞳の奥では、暗い炎が渦を巻いている。

86・87
タイトル[鮫を撃つ]
地上にたむろしていた見物人は、
待ち飽きて居眠りしたりカードで勝負したりしていたが、
ナルザのユニックが突然大きく長く吠えたのでびっくりした。
寝ていた男は跳ね起きて、よくわからないまま立ち上がろうとしてくじけて
塹壕に転がり落ちた。ユニックはしぶきを上げる湖面を睨んで吠える。
フォーーーウアアアーーーーッ!
塹壕に落ちた男は地上に頭を出したが、仲間たちが次々に転がり込んで
また中でもつれた。
崖の背後の空の、遠く高い雲の中から白い獣が羽ばたいて現れた。
次に横長コマで鮫がでるところをほぼ真横わずかに水中側から見せる。

88・89
ナルザは床のレバーを足で倒す。四方の柵は花びらのように外に開いて
射界を確保した。柵たちが垂直に垂れた時には蹴られた石が落下していた。
落下石の質量と加速度はロープを頼もしい勢いで引き、弓は深く引かれ
低い音と共にロックされた。ここまでほぼ1ページ、小さな絵を多用して
空間をわかりやすく描く。
矢を装填し結び目から閂を抜くとロープは床を逃げ地表へ吸い込まれてゆく。
この間数秒。鮫が完全に現れた。今回は離水の勢いが大きかったのか、
まだ飛沫に包まれている。11時を告げる鐘の音が響く。
グリリーーンン・・・ゴウウーーン・・・・ギーンン・・・・ギーンン・・・
(鐘を鳴らす現場の絵は必ずしもここには必要ないが、ここまでのどこかに描く)

90
正方形に近い大きなコマ、上からの絵。櫓より崖よりはるか高くから白い獣は
下向きに羽ばたいて降下する。
ナルザは鮫しか見ていない。右腕でボウガンを抱え一体となる。
独白[向かって来たなら口の中へ撃つ]

91
しかし鮫は飛沫が静まる前に青い炎を吹いて、一瞬早く垂直降下した。
ナルザは最大に弓を低く傾けて追尾しようとした。
しかし、鮫が単に逃げたのではないことを櫓の揺れが知らせた。
グシャアア!
竹部分に食いついたのだ。見物人「銀色の奴は賢いぞ!」
頂台を支える四本の竹のうち一本がすでに噛み破られて力を失った。
太さ15センチはあるが鮫にかかれば小枝も同じだ。

92
「いかん!ナルザ降りて来い!やられちまうぞ!」
鮫は二本目の竹に食いついた。「櫓の内側をつたって降りるんだ!」
ナルザはぐらぐらと揺られながら、変角器のL字棒を忙しくまわして
ボウガンを解放した。そして腰の命綱をほどいた。
二本目の竹が砕かれて床は大きく傾いた。
ベキベキギギギギギシィィィ。
ボウガンを両手で抱えたナルザは危うくバランスを取りながら
下界に鮫の尾を見た。
★このページはトリミングを多用してパニック感を演出する。
ただしナルザ自身は冷静である。

93
独白[奴はつぎに、少し櫓から離れて、三本目に食いつく。
空中ならボウガンの重さは問題にならず、左腕の力はいらない。]
床を蹴ってふわりと宙に舞った。獲物は5メートルと離れていない。
鮫撃ち機械は空中で逆さまとなり銀色の巨体に向かってひきがねを引いた。

94
「あばよ鮫野郎!楽しませてもらったぜ」
浮き袋を破られた鮫は藍色の気体を噴き出した。
きりもみ状態で斜め下に遠ざかり見る見る小さくなる。
あおられて逆方向に飛ばされたナルザは吠えた。
「見たか!俺はトライア一の鮫撃ちだ!」

95-96-97
銀色の大鮫は隕石のように大地に激突し、
青い火球を中心に破裂し四散した。
その爆発音は祝砲のように教会まで響いた。
教会側の絵。
ナルザはというと、ウィーニックの背中に受け止められて驚いた。
そして、自分の落下を忘れていたことに気づいた。
「しまった!いや助かった・・・!」
ウィーニックは低く滑空しナルザを地面に転がすと、着地することなく
空へ帰ってゆく。見物人たちはこの活劇に魅了されてすっかり満足のようだ。
その中のにいた学者は駆け出し、むなしく呼びかけるのだった。
「おおい!もっと姿を見せてくれえ・・・」普段の冷静な彼との大きな落差。
地面のナルザと彼を囲む村人は笑って、空に向かって手を振った。
「はははは!ウィーニック!ありがとう!」

98-99
タイトル[エピローグ]
春も終わろうかという麗かな或る日、賑やかな都。細かな絵で広い光景。
駐車場のようにユニックを繋ぐ場所があり、ひとりの男に番人が一対の陶板のひとつを渡す。
割り符のようなものらしく、彼の荷車にひとつをくくりつけた。男は人波の中へ進む。
顔は読者に示さない。やや歩く。高く掲げられた看板に布の拡大図。そこへ入る。
店内部。客は女ばかり。ここで男をギアと示す。
「絹はありますか」「あるけど高いわよ」
「少しでいいんです。髪を結ぶリボンにするだけだから。」
「それなら簡単だからすぐ仕立ててあげるわ。選んでちょうだい。」
布屋の女は見本帳を持ち出して開いた。見本のアップ。

100
ギアはそれを眺めたがちょっと困って、問い返した。
「何色がいいかなあ?」
店の外観を含む広い光景に、尻尾なしのフキダシが入る。
「髪は黒なんだ」
大きめの余白に、[end]。

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ナルザ負傷のあとの会議の出席者には
読者になじみの顔を多く混ぜる。
決戦の見物人も同様だが、
両シーンに描かれるのは学者だけ。






posted by スナノ at 22:40| 実践的解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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